2012年05月20日

馳星周『弥勒世』(上)

 「地球上で帝国主義が終りを告げる時、沖縄人は『にが世』から解放されて、『あま世』を楽しみ十分にその個性を生かして、世界の文化に貢献することが出来る」(伊波普猷「沖縄歴史物語」)

 馳星周は映画の『不夜城』しか知りませんでした。が、しかし、「ミルクユ」です。でも、慎重に「上巻」だけ購入(笑)。渡辺保の『黙阿弥の明治維新』に引っかかって、ずっとツンドクでした。主人公の金城武がミスキャストでは?と思ってしまった映画『不夜城』ですが、山本未来(山本寛斎の娘)と鈴木清順がいい味出していたのを覚えています。
 立ち読みで、1969年11月日米共同声明を挟んで、どうやら話は展開します。「コザ暴動」がヤマ場?「荒唐無稽のバイオレンス物」に仕立て上げるには、いささか……

 と思って読み進めたら。仰天。そうか、バイオレンス物とばかり思っていたが、ラブロマンスか。
 仁美の「どうしてこんなに好きなんだろう」というリフレイン。そして尚友の“なぜこの女なのだろう? なぜこの女でなければならないのだろう?”というつぶやき。

 そして、「自分の意志で涙をとめていた女が、静かにひっそりと、おれの腕の中で泣いていた。」
 これで、上巻終了。すぐ下巻を買いに走りました(笑)

 「ビーサン」は「草履」、「タコライス」(なにしろ私の先輩は「何だ、たこが入ってないじゃないか」と真面目な顔をしてつぶやいたのを昨日のように思い出します。)は「ターコライス」、そして「沖縄復帰協会」に「ヴェトコン」……。これらは話の展開にまったく関係ないし、重箱の隅を突くようなことは止めましょう。復帰協の桃原用行副会長に、社大党の安里(積千代)委員長、全軍労委員長はまだ存命(上原康助さんの「40年記念式典」での挨拶は結構評判を呼びました)なので別名なのでしょうか、いずれにせよ、よく読み込んでいます。もっとも、当時のコザのアシバーにはせせら笑われるでしょうが。
 私が知っているのは「百円弁当」と「ミスターコーラ」です、もちろん72年5月15日以降の話。

 船戸与一の、ねばりつくような文体と神経をささくれ立たせる文脈に較べれば、はるかに滑らか。そもそも感情移入したら手酷い目に遭う船戸に対して、馳はやさしい。同時に購入したのが、船戸の『夜来香海峡』ですから、ご容赦。

 さて「下巻」は、當銘愛子は……

 そうだ、慌てて付け加えますが、
 「泣いてもいい、しかし自分の意志で涙を止められる女になりなさい。」とは、有川浩『阪急電車』での宮本信子演ずるおばあさんの名台詞でしたね。
posted by 風游 at 20:00| 沖縄 ☔| Comment(1) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。