2012年02月10日

今井正監督『にごりえ』

樋口一葉『十三夜』『大つごもり』『にごりえ』

 今日のBSは『にごりえ』。
 1953年の、監督・今井正、脚本・水木洋子の樋口一葉の短編小説を原作とするオムニバス映画。脚本監修に久保田万太郎。
 樋口一葉は、森鴎外、幸田露伴を始め、当時の「文豪」たちの絶賛を浴び、のちに「大つごもり」から死ぬまでの期間は「奇跡の14ヶ月」と呼ばれたが、明治29年11月23日、24歳6ヶ月で肺結核により死去。
 丹阿弥谷津子・芥川比呂志、久我美子・仲谷昇、そして淡島千景・宮口精二である。その他、長岡輝子、杉村春子を始め、名優ざくざくの傑作。それもそのはず、当時の文学座の座員総出である。初見の時、子ども時代のお力のエピソードに胸を痛めた記憶だけが鮮明に残っている。一葉も貧窮の中で死んでいったそうだが、それにしても、生きて行くことは辛く悲しいというメッセージが全開の映画……。

 これが映画初出演の仲谷昇は、芥川比呂志をリーダーに、通行人役程度で顔を見せた若き日の神山繁、小池朝雄らともに、杉村春子率いる文学座を脱退し、劇団雲(もっとも、これは福田恆存が結成した「現代演劇協会」の付属劇団)に参加し、1975年には福田と袂を分かった芥川とともに演劇集団円を結成した。あっそうだ、「大つごもり」には、これまた端役のお嬢様として、後に結婚・離婚する岸田今日子も出ている。
 もっとも、「大つごもり」では、みね(久我美子)の所行を石之助(仲谷昇)が盗み見するシーンがあったように記憶違いをしていた。放蕩息子の「善行」など、庶民には所詮あずかり知らぬこと。子どもの頃に見た時は、志賀直哉の「小僧の神様」でも思い出していたのか(笑)。明治期の話とは言え、53年当時も、さほど変わらぬ貧しいさであったろう。
 山村聰がおいしい役で出ていたが、一葉の彼の描写は、如何ともし難い(褒めているのです。何しろ23歳です。もちろん、100年以上前ですが)

 未見だが1955年には美空ひばりで『たけくらべ』が映画化されている。監督は五所平之助(『女優』では、中井貴一が五所平之助役で一瞬だが出ていた。言わずと知れた吉永小百合が田中絹代を演じた、彼女にすれば佳作である(苦笑))。正太郎役で、市川染五郎(現九代目幸四郎)が出ているそうである。

 どうでもいいことだが、高い評価を受けている『一葉日記』には、1893年に畳の上(生まれ故郷の清水港の自宅)で大往生した清水次郎長の葬儀について触れている。「上武甲の三州より博徒の頭だちたるもの会する500名と聞こえたり」(『臨終図巻』より重引)。

posted by 風游 at 16:50| 沖縄 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 忘れてました。1963年の集団脱退事件(劇団「雲」)の後、これまた有名な三島由紀夫の「喜びの琴事件」で、演出家の矢代静一を始め、賀原夏子、南美江、中村伸郎などが退団(翌64年NLT結成)。文学座は看板俳優の脱退で、さんざんな目にあった。
 「十三夜」の丹阿弥谷津子もNLT入りし、65年には三島の代表作『サド侯爵夫人』で主人公を演じる。彼女はNHKの連ドラ「ちゅらさん」でも「端整な下宿屋」の女主人を演じていたが、劇中、再婚した相手役の北村和夫は、分裂・脱退騒動後も杉村春子と常に行動を共にし、杉村亡き後の文学座を支えた一人であった。

 話は飛ぶが、沖縄併合時での日米密約問題で評判の山崎豊子の『運命の人』だが、すでに70年代には澤地久枝が『密約』で徹底検証を行っていた。それをドラマ化した時の西山太吉役が、北村和夫だった。同ドラマでは外務省職員役の吉行和子の造形がとても印象に残っている。

参考:薔薇、または陽だまりの猫
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/e8bc063493ccd73e288de1c15e8ebafe
Posted by 風游 at 2012年02月16日 23:21
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